人に仕事を教えている時、ふと気づくと、相手が思いのほかキョトンとしていて、え!
という経験、ありませんか。
「あれ…なんだか噛み合ってない…」
今回は、Web業界に限らず、仕事だけに限らず、誰かに何かを「教える・説明する立場」になった人が、ただ知ってるだけで少し幸せになれる、2種類の新人タイプ、『てんちゃん』と『せんちゃん』をご紹介します。ふたりの特性を知るだけで、なめらかになるコミュニケーションが、きっとありますよ。
はじめに
今からn年前。
新人の教育を担当することになった、私。
よし、先輩にしてもらったみたいに、丁寧に説明するぞ!!ひとつずつじっくりと、教えてあげるぞ!!と、張り切り、それはもう懇切丁寧に語りたおす日々でした。そんなある日、しばらく黙って見守ってくれていた先輩が、見かねた様子で言ったのです。
「説明が、くどい」
え!!くどい?!
ちょ、え!!丁寧な方がいいやん??説明不足よりよくない??
確かに新人ちゃん、若干飽きてる感じあるけど!!!
話なげぇなみたいな雰囲気、言われてみたらなくはないけど!!!
てかそもそも先輩が教えてくれたのと同じようにやってるだけなのに??なぜ?!と、私、大混乱。
「あのね、」
そのあと先輩が一対一でお話ししてくれたことは、私に大きな衝撃を与え、その後何年経っても「あれかも!」と、いろんな場面で私にヒントをくれることとなるのです。
新人は2種類いる
先輩が伝えてくれたことは、こうでした。
「長く新人教育をやってわかったんだけど、新人は2種類いる。『今すべきことをシンプルに知りたい』タイプと、『全体の流れも知りたい』タイプと。これは良し悪しじゃない。ただ単純に、2種類いる。この2種類は、教えるべき順番、説明すべきポイントがぜんぜん違う。教える側と教えられる側でここが食い違うとお互いストレスだし、違いに気付かず教える側が自分のやり方を押しつけることが、一番の不幸。」
?!?!?!
さらにこう続けます。
「私の経験上、圧倒的に前者の方が多いことも、あなたは知っておいた方がいい」
!!!!!!
雷に打たれたような衝撃です。
なにそれ!!!みんな自分と一緒だと思ってた!!!
自分とは違うタイプがいるなんて、ぜんぜん知らなった!!!
私は、自分が後者だから、みんながみんなそうだと思ってた。
ざっくりでも全体像を教えられずに指示されても困る!
前後の脈絡もなく投げられてもイミフだよね!みんながそうなのだと思ってた。
いやもう、目からうろこどころの騒ぎじゃなかったです。
この時にわかったのですが、先輩は説明が丁寧なタイプの人だったのではなく、完全に後者である私の特性に合わせた教え方をしてくれていたのでした。
それぞれの特性
あの時先輩に教えてもらった考え方をヒントに、その後「教える」場面では注意深く相手の反応を見て、やり方を微調整をするようになりました。
食い違いを減らして理解しやすい工夫をすることは、効率化でもあります。
教育は「コスト」ですから、いつまでもダラダラやっていいものではなく、なるべく早く手を離れてもらわなければいけませんからね。
そんな私の経験で揉んでいった2種類のタイプを『てんちゃん』『せんちゃん』として、ご紹介します。
その1、てんちゃんの場合
『今すべきことをシンプルに知りたい』タイプ、つまり、『点』を渡すとスムーズにいくのが、てんちゃん。
- とにかく要点を伝えてほしい。
- 点を集めるうちにだんだん流れが見えてくればOK。
- いちいち遠いところから説明されると回りくどいと感じる。
- 理由はあとからついてくる。
このタイプの長所は、瞬発力です。
手を動かすのが好きで、ごちゃごちゃ面倒くさいことはなるべくはぶいて「やってみる」スピード感があります。
短所は、「言われてないことは存在しないこと」かのような時があり、また、たくさん説明されても、要点以外は右から左だったりします。
その2、せんちゃんの場合
『全体の流れも知りたい』タイプ、つまり、『線』を渡すとスムーズにいくのが、せんちゃん。
- とにかく情報はいくらでもほしい。
- ざっくりでいいから全体像と流れを把握していないと不安。
- 説明不足すぎると自分がやってることが本当に必要かつ効率が良いことなのか混乱する。
- 理由がないと理解ができない。
このタイプの長所は、自走力です。
考えるのが好きで、必要な情報さえきちっと渡せば自分でどんどんやるべきことを見つけて来ます。
短所は、最初とにかく面倒くさいです。あなたはまだそこを気にしなくていい、という所にひっかかったり、新人のうちは数をこなしてなんぼ、の場面でもなかなか手が動かなかったりします。
どっちが良いかでなく、大切なのは教える側が相手の反応をみること
どっちが評価されるか、どちらのタイプがやりやすいかは、環境や置かれた立場でまったく違うので一概に言えません。
それにてんちゃんもせんちゃんも、新人の時のタイプ分けですので、成長とともに当然、変化して行きます。
新人のころてんちゃんだった人が、ずっと目先の作業しか見てないなんてことはありません。入口が分かれているだけで、だんだんと区別はなくなっていくものです。
入口だけとはいえ、全員をどちらか一方に分けるなんて強引だな、と感じた人、大丈夫です。教える立場になった時に思い出すべきは「自分の思い込みとは逆の方」の特性ですので、極端に捉えているぐらいでちょうどいいです。経験上。
大切なのは、自分がそうだったから他の人もみなそうだと思い込まないこと。思い込みの押しつけこそが一番の不幸です。
自分がてんちゃんタイプだったからといって「クドクド説明されるのは嫌なはず」という思い込みで必要な情報を渡さないやり方をすれば、新人せんちゃんはストレスを感じ、良いところが伸びません。
新人せんちゃんは「めんどくさいやつ」ではありません。情報を自分で整理して仕事をつかむ力を見てあげてほしいです。
逆に、自分がせんちゃんタイプだったからといってなにもかもを説明することが正義だと押し通せば、新人てんちゃんは回りくどさにストレスを感じ、やる気がそがれてしまいます。新人てんちゃんは思慮の浅い人ではありません。点と点を自分で繋げていきますので、まずやってみる姿勢を見守ってあげてください。
てんちゃんは「説明がくどい先輩」が苦手。
せんちゃんは「説明が足りない先輩」が苦手。
「説明がくどい先輩」「説明が足りない先輩」どっちが好きなの?
って、あややも歌ってましたっけ。
迷うなぁ。
親子関係にも役立つ
これは親子関係におきかえても、役立ちます。
例えば、「ダメならダメだけで受け取るタイプの子」に、親がその都度クドクドと理由を説明すればストレスになりますし、「ダメな理由が知りたい子」に「ダメなものはダメだ」では納得がいかずストレスです。
例えば、このあと何があってどれぐらい公園で遊べるのか知っておきたい子もいれば、先のことをくどくど言われるより今公園で遊んでいいかどうかだけを伝えてほしい子もいます。
新人教育とどちらにも共通するのは、思い込みで決めつけず、特性を観察して伝え方を工夫すべきは、教える側だということです。
まとめましょう
今回ぜひ持ち帰っていただきたいのは、「てんちゃんせんちゃんふたつのタイプがいる!」ということからさらにもう一歩先、「自分とはまったく違うタイプがいることを知り、反応を見て教え方を工夫する発想」です。
なんだか噛み合ってないな、やりにくそうだな、と感じた時は、相手の特性を無視して自分がズレたやり方をしてしまっているのではないか、という可能性をうたがってみてください。
教えられる側の人も、「なんだか噛み合わなかった経験」と重なるところがもしあったなら、教える側になった時にぜひ思い出してみてください。きっと、みんなハッピー。
みんな違って、みんないい。
互いを尊重し、コミュニケーションがよりなめらかなものとなることを、祈っています。
ところであなたは新人の頃、てんちゃんせんちゃん、どっちのタイプだったの?
よく語るTwitter: @rrisa_wp
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ちょっと追記
何度も言いますが、てんちゃんせんちゃんのタイプ分けは、新人の時の話しです。新人の時の話しですぜ~。